トレーニング理論
2023.11.13
糖尿病はインスリンが正常に働かない、若しくは生産されないことによって起こる代謝機能障害です。慢性的な高血糖状態が続くことで、様々な合併症を発症させてしまいます。糖尿病は主に1型と2型がありますが、9割が2型糖尿病であり、運動不足や暴食などの生活習慣の問題によって発生しています。
炭水化物を食べると糖質(グルコース)に分解され、血管内に入り込み、血糖値が上昇致します。すると膵臓のランゲルハンス島β細胞からインスリンというホルモンが分泌されて、血管内に溜まったグルコース(血糖)を細胞に取り込んでエネルギーに変えます。インスリンが分泌されなければ、身体はエネルギーを得ることが出来ずにそのまま血管内に残り続けることになります。そして慢性的な高血糖状態になり糖尿病となるのです。
▶HbA1cは、赤血球のヘモグロビンに糖が結合している割合です。糖質は一度ヘモグロビンに結合すると、ヘモグロビンが死ぬまで離れません。ヘモグロビンの寿命は約120日。その為、HbA1cは長期間の血糖値を反映する指標になります。血糖値が高いほど結合する糖質の量が多くなります。この割合が6.5%を超えると糖尿病と診断されます。
次の4項目のうち、1つでも該当すれば糖尿病と定義されます。
膵臓がインスリンを作れない。
10代までの子供に多く見られる。
インスリン注射が必要
先天性が高い
必ずインスリン注射を必要とするわけではない
定期的な運動、経口薬の使用で管理する
チアゾリチンジオン(TZD)を服用してインスリンの感受性を高める
45歳以上の肥満の方に多く見られる
妊娠糖尿病
1型糖尿病は先天的な場合が多いです。膵臓のランゲルハンス島β細胞が阻害されてインスリンを生産できなくなってしまうことが原因となります。このため、インスリン注射によって血糖値を調整する必要があります。
全糖尿病患者の約9割が2型糖尿病であり、主な原因は過剰な食事量・運動不足・ストレスによるもの。生活習慣を見直すことが予防するための第一歩になります。運動不足とストレスによって食事量が過剰になり、インスリンが大量に分泌される状態が続くと、やがてインスリンの分泌量が減る、若しくはインスリンの感受性(効き目)が悪くなり、血糖値が下がりにくくなります。運動療法や食事療法によってインスリンの感受性を高めることが大切になります。
妊娠糖尿病は、妊娠時に発生する可能性のある糖尿病です。妊娠時にのみ血糖値が異常になります。一時的な糖尿病ですが、このタイプの方は、後年になって2型になるリスクが高まります。妊娠時によるホルモンバランスの変化が原因と言われていますが、殆どの場合は出産後に血糖値が安定して正常化します。
▶糖尿病の怖い所は、自分が糖尿病になっている事に気づかない人が多いこと、そして一度かかると治らないことです。糖尿病は、血液中のグルコースが増加して血管の内外で浸透圧に差が出る為、細胞から血管内へと水分が移動します。それにより細胞は脱水状態となり喉の渇きに繋がり、尿も増えます。高血糖が持続すると、体内のタンパク質と糖が結合してAGE(終末糖化産物)を発生させます。これにより糖尿病腎症になるリスクが高まります。
▶眼の細かい血管から出血し、網膜剥離を引き起こす症状。失明のリスクがあります。
▶体内で糖質とタンパク質が結びついてAGE(終末糖化産物)が生成され、このAGEが腎臓にある老廃物をろ過する役目のあるフィルターにくっついて炎症が起きます。その結果、腎臓の細かい血管が破れたり破裂したりして、体内の老廃物をろ過できなくなります。進行すると人口透析治療を行う必要があります。
▶手足の末梢神経が障害を受ける症状。足の温覚、痛覚が低下するため、怪我をしても気づかずに悪化します。また、閉塞性動脈硬化症によって下肢の血流に障害が起こると、足の壊死に繋がります。最悪の場合切断するリスクがあります。
2型糖尿病においては、生活習慣の改善を目的として運動療法と食事療法をメインとして行います。
運動により体に蓄積しているグリコーゲンや中性脂肪を燃焼させます。グリコーゲンはグルコース(ブドウ糖)となり、中性脂肪は遊離脂肪酸となります。糖質や遊離脂肪酸の利用を促進させ、これにより、血糖値のコントロールの改善・インスリン感受性の増加・脂質代謝の改善・血圧低下・心肺機能の改善という効果が期待できます。
脂肪というのは、エネルギーの保存だけでなく、それ自体がホルモンを分泌致します。(レプチンやエストロゲンなど)アディポサイトカインという物質も脂肪細胞から分泌され、これが動脈硬化やインスリンの働きを阻害させます。有酸素運動は、会話が出来るほどの中強度の運動であれば糖質よりも脂肪組織をメインとして分解しエネルギーに変えるので、アディポサイトカインの減少が期待できます。
具体的には、ウォーキング、ジョギング、水泳、自転車等の全身運動を行いましょう。週に3~5回、20~60分程度の頻度で行いましょう。
心疾患や高血圧持病としている方などは先ずは軽めの運動から行いましょう。➀種目につき、10~15回を3セット、8種目程度行いましょう。
運動を行うとグルカゴンというホルモンやカテコールアミン(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミン)が分泌され、肝臓のグリコーゲンを分解してグルコースを血管に放出し、血糖値が上昇します。その結果、運動中の急激な高血糖によるショックが起こります。
また、運動を行うと筋肉がエネルギーを消費して血糖値が下がるので、インスリン注射や経口血糖下降薬を使用している方は、低血糖をさらに下げやすく、低血糖症を引き起こす可能性もあるので非常に注意しながら行いましょう。
運動中は適切な血糖値の管理を行い、必要に応じて食事(糖質)を摂る、適度な水分補給など、注意深くやりましょう。
▶JATIトレーニング指導者テキスト[実践編]3改訂版、P1635⃣2型糖尿病に対するトレーニングプログラム、NPO法人日本トレーニング指導者協会編著、大修館書店
▶図解眠れなくなるほど面白い糖質の話P48~53、医学博士 牧田善二、日本文芸社
▶全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会テキスト、P223~226、NESTA JAPAN事務局発行、株式会社医学映像教育センター
▶説明できる病態生理P76~83、竹田津 文俊、Gakken、株式会社 学研プラス
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