トレーニング理論
2024.06.05
▶少子高齢化が進行する中、老後を少しでも長く楽しく生きる為に健康寿命を延ばすことが注目されており、老後の健康目的でフィットネスジムの入会者が急増、そしてフィットネスの市場規模も年々増加傾向にあります。しかし、『何年もジムに通っているのに筋肉が全然つかない』という話をよく聞きます。なぜ、長年ジムでトレーニングをしているのに筋肉がつかないのでしょうか?
▶徐脂肪体重とは、身体から脂肪だけを取り除いた、筋肉と骨と臓器の部分です。この重さが増えることが、イコール筋肉が増えるということになります。そして、筋肉量が増えるということは、筋肉の繊維の本数が増えるという訳ではなく、筋肉が肥大するということです。
徐脂肪体重は、体重と体脂肪率さえ分かれば計算することが可能です。
例)体重60kg、体脂肪率20%の場合
60kg×20%=12kg(脂肪の量)
60kg-12kg=48kg(徐脂肪体重)☜ここを増やします。つまり、ただ太って脂肪の量が増えるだけでは徐脂肪体重が増えたことにはなりません。筋肉量を増やしつつ、脂肪はなるべく増やしすぎないようにする必要があります。
▶結論から言うと、トレーニング・栄養・休養の3つの要素を適切に行うことこそが筋肉を作るのに重要であり、これを適切に行えていない人たちが非常に多いです。今回の記事では、この3大要素について細かく解説していきます。
この記事を読むことで、ウェイトトレーニングを始めて1年以上経過したにも関わらず筋肉の成長具合が鈍化したいわゆるプラトー状態の方々には有益となる情報になります。特にトレーニングに慣れ始めている初心者~中級者の方向けの記事となります。
目次
▶ジムに通っているトレーニー(筋トレしている人の総称)は、赤色の筋肉、白色の筋肉、遅筋繊維、速筋繊維という言葉を聞いて事があると思います。白色の速筋繊維は陸上のスプリンターのような爆発的なスピードを生む筋肉、赤色の遅筋繊維はマラソンランナーのような持久力のある筋肉のことです。それぞれの特徴をまとめました。(ややこしくなるのでピンク色のタイプⅡa繊維は省いてます)
血液の供給量が多い
脂肪をエネルギーとして使う
サイズの小さい繊維
筋肥大しにくい(筋肉つきにくい)
持久力スポーツ
血液の供給量が少ない
糖質をエネルギーとして使う
サイズの大きな繊維
筋肉肥大しやすい(筋肉付きやすい)
瞬発力のあるスポーツ
▶ズバリ言うと、筋肉を肥大させる(量を増やす)には、速筋繊維を沢山導入するレジスタンストレーニングを行う必要があります。=太もも・尻・胸・背中などの大きい速筋繊維がトレーニングによって成長するからこそ筋肉が増えるのです。そして、世のボディビルダーやマッチョな人たちは、速筋繊維を沢山導入するために、日々マシンやバーベルを使って爆発的に力を発揮する運動を1時間も2時間も黙々と行っているのです。速筋繊維こそが、増やすべき筋肉なのです。
※レジスタンストレーニング(抵抗運動)とは、マシンやダンベルを押したり持ち上げたりすることで筋肉に抵抗(負荷)をかけることで、筋力を強化し、筋肉の成長を促進する方法です。ジムで使うマシンがそれにあたります。
➀まず言いたいのが、フィットネスクラブでエクササイズをしている皆さん、重りが軽すぎです!遠くから観察していると、1セットあたり10回でレジスタンス運動をやめているのですが、(理論的には合っているようには見えます)全く息が上がっておらず、疲労も感じていません。多分頑張ればあと4回くらいできると思います。そうであれば、このトレーニングにおいてまだまだ適切な重さではありません。この方の場合は、あと5kg程度増やして、6~10回あたりの反復で「もう無理。全て出し切った。」と思うくらい動かさないと筋肉のポテンシャルを最大まで発揮しきれません。
②次によくあるのが、持ち上げた後に力を抜きがちです!全力で持ち上げるのはOKです。しかし元の位置に戻る際に力を抜いてしまっています。ここで2つの事を覚えておいてください
▶TUT(タイムアンダーテンション)とは、約10回の往復運動の間は、常に力を発揮し続けなければならないということです。10回の往復にかかる時間はだいたい50秒くらいですが、この間は休んではいけません。持ち上げる時も降ろすときも常に重りを筋肉で受け止めておかなければならないのです。そしてそれこそが筋肉の発達において重要なのです。
▶エキセントリック運動は、ブレーキ動作の事です。スクワットでいう、重りに耐えながらゆっくりブレーキをかけて降ろしていく局面のことです。筋肉の特徴として、爆発的に持ち上げる時よりもブレーキをかけながらゆっくり降ろしていく方が50%も力が強いということが分かっております。つまり持ち上げる局面、降ろしていく局面、どちらも最大限に筋肉を使ってあげないと成長に結びつかないということになります。
③レジスタンストレーニングや短距離走、野球、相撲、ハンマー投げのような短時間で高い負荷のかかる運動をするには基本的には炭水化物:とくにブドウ糖(グルコース)を沢山必要とします。つまり、米やパン、麺類、穀類などの炭水化物をメインとする主食を食べることで運動時のパフォーマンスが上がるといえます。
※ATP-CP系のクレアチンリン酸(8秒程度の力発揮)についてはややこしくなるので省きます
『なかなか筋肉がつきません』と悩んでいる方で、食事を抜いている方が多いです。主食をしっかり食べて、ジムで爆発的に力を発揮しないことには筋肉がつきません。
『それじゃあ私は果物が好きだから毎日果物を沢山食べよう!果物も炭水化物だよね!』
とはなりません!果物は確かに炭水化物ですが、果糖(フルクトース)であり、ブドウ糖(グルコース)ではありません。果糖は代謝するためにインスリンを必要とせず、肝臓でグルコースに変換されてようやく代謝されます。それには時間がかかります。そして果糖は内臓脂肪や身体を老化させるAGE(終末糖化産物)にもなりやすいです。
筋肉をつけるには、ブドウ糖(グルコース)を摂ることで分泌されるインスリンが非常に重要になります。筋肉を作るたんぱく質は、インスリンの分泌があってこそ、筋肉の合成率が高まるのです!もっと簡単に言うと、「米と肉を一緒に食べましょう!」ということです。
『わかった。米と肉を食えばいいんだ。じゃあこれから毎日米と肉だけ食べれば筋肉がつくという事ね!それだけでいいならすごい簡単!筋肉を増やすなんて余裕!』
とはなりません!ただ単に炭水化物とタンパク質だけ必要量を食べても筋肉がつくわけではありません。筋トレで追い込んで筋肉のポテンシャルを最大限まで発揮しないといけないのです。そしてこれが難しい。エクササイズによって筋肉を限界まで追い込むことで、mTOR(エムトア)というたんぱく質キナーゼ(酵素)が活性化されて、筋肉を成長させることができるのです。エクササイズで最大限まで追い込まないとmTORが活性化されず、栄養だけ取っていても筋肉の成長が望めません。
【筋トレで追い込む▶mTORが活性化される▶グルコースとタンパク質を摂る▶筋肉が回復して前よりも強く太くなる】という過程を踏むことが大事になります。
▶糖質は様々な種類があります。詳しくは糖質についての記事に書かれています。
数種類の糖質がある中で、筋肉を増やすための糖質とはブドウ糖のことであり、グルコースのことです。前述のとおり、グルコースを摂取することで膵臓が血糖値に反応してインスリンが分泌されます。そのインスリンがたんぱく質を筋肉に合成させてくれる強力なアナボリックホルモンとなるのです。
しかし、グルコースはインスリンを分泌されるから重要なだけでなく、ブドウ糖自体が高重量を反復挙上するレジスタンストレーニングにおいて最たるエネルギー源となるから重要なのです。
▶グルコースは、筋肉と肝臓にグリコーゲンという形で溜めて置けることが可能です。つまり、グリコーゲンを溜めておくことで、長時間にもわたって質の高い運動ができるということです!
▶食事を抜いた状態では身体にグリコーゲンを溜めることは出来ません。その状態で運動をすると、糖質が枯渇してしまいます。そうするとどうなるか?筋肉を分解してエネルギーとして活用してしまうのです。筋肉を増やす為に行うトレーニングなのに、筋肉が減ってしまうと本末転倒ですよね?必ずしっかりとご飯を食べた状態でトレーニングに励んでください。
『じゃあやっぱり沢山米を食べればいいんだ!大量に米を食べて一生分のグリコーゲンを貯蓄するぞ!グリコーゲンは溜めるほど良いんだ!』
とはなりません!なにをするにしても極端はいけません!糖質と血糖値についての記事で書いているように、極端になって糖質を一気に食べ過ぎると中性脂肪に変換されて、脂肪として貯蓄されます!インスリンは、筋肉だけでなく、中性脂肪も合成させてしまうことは必ず念頭に入れておいてください。
筋肉は付きにくく、キャッシュみたいにすぐに減りやすい
脂肪は付きやすく、定期預金みたいになかなか減らない
とよくいわれます。中性脂肪という名の定期預金は増やしすぎる必要はありません。
➀タンパク質(特にバリン・ロイシン・イソロイシンといわれるBCAA)を筋肉として合成させるアナボリックホルモン
②炭水化物を中性脂肪に変換するアナボリックホルモン
ということを知る必要はあります。
『ちょっと待って!一ヶ月前の低糖質ダイエット完全版の記事で糖質は控えるように。といってたよね!糖質を控えていたらそもそも筋肉がつかなくない?トレーニングでも最後まで追い込めないよね?』
これに対する答えとしては、ダイエット期間と筋肉の増加の期間は分けて考えるべきです。低糖質ダイエットを実施している場合は、インスリンによる中性脂肪の合成を防ぐ為、そして中性脂肪をエネルギーに変換して燃えやすい体質を作る為に、糖質とインスリンをコントロールするダイエット法が低糖質ダイエットなのです。筋肉をつけるには当然炭水化物を食べること。そしてそれによって分泌されるインスリンの効果が必須になります。そもそも筋肉をつけながらダイエットをするという考えは、特定の条件が無い限りは改めるべきです。増量期間と減量期間に分けてボディメイクを頑張りましょう。
▶意外に見過ごされがちなのが、休養面についてです。
『仕事で身体が疲れているので軽めにトレーニングお願いします』
『寝不足で軽めにトレーニングお願いします』
『一日中デスクワークで腰と肩が凝っていて全力で運動できないです』
このようにパーソナルトレーニングにお越し頂いた時点で既に疲労困憊なお客様、非常に多いです。現代社会はストレスに満ちていますね。長時間労働、睡眠の質の低下、多額の税金、運動不足、栄養の偏り、デスクワークによる姿勢不良など、ストレスで疲労困憊になる理由を挙げたらきりがないですね。
疲労困憊ということは、その状態では全力でトレーニングをすることが難しくなります。(ケガのリスクも高くなります)全力でトレーニングが行えないということは、筋肉を追い込んでポテンシャルを発揮することが難しくなります。そして全力を出せない分、扱う重量は徐々に減っていきます。
残念ながら、フィットネスジムでは1年以上通っているのに扱う重量が全く増えていないということが普通にあります。最高のコンディションでトレーニングに励むことで筋肉のポテンシャルをフルに発揮し、結果的にmTORを活性化させ、糖質とタンパク質を最大限に活用することができます。
これらの工夫を組み合わせて実践することで、コンディショニングを改善し、トレーニングを全力で行うことができるようになるでしょう。個々の体調やライフスタイルに合わせて最適な方法を見つけることが重要です。
▶この記事では以下のことがまとめられています
➀トレーニングは最大限に効かさなければならない
②糖質とタンパク質を摂取することで筋肉を作ることができる
③休養を適切にとることで全力でトレーニングを行うことができ、筋肉のポテンシャルを最大限発揮できる
運動・休養・栄養の3大要素が組み合わさることで筋肉の増加を達成することができます。当ジムでは、筋トレとストレッチを組み合わせることで、パーソナルトレーニングによる疲労を長引かさないようにしながらトレーニングを行うことをメインとしています。勿論食事のアドバイスもさせて頂きます。パーソナルトレーニングを通して皆さんの理想の身体を手に入れることに全力を尽くします。
インスタグラムにて定期的にトレーニング風景を撮影しています。
※スマホから見れない場合は、PCからご確認できます。